河田さんは、テーブルの花瓶に活けられた白い花に目を落とし、こう話してくれた。
この花の学名は、キンポウゲ科ニゲラ属の一年草。普段は「ニゲラ」と呼ばれている。お店にあったのは白い花だが、ニゲラには白、ピンク、そしてブルーの花を付けるものがある。しかし、どの色の花も、花が散ると最期には黒い種を付けることから、日本名では「黒種草」と名付けられたという。
さらに面白いことに、英語名では花の時期によって名前が変わる。花を咲かせているときは、"Love in the mist"(霧の中の恋人)だが、種を付けると"Devil
in the Bush(藪の中の悪魔)"になる。河田さんはニゲラの花を一本手に取り、白い花びらをめくって種になる部分を見せてくれた。それはまだ緑色だったが、確かに、悪魔の王冠(角?)のような形をしていた。