ライブハウス「シルバー・エレファント」






1978年、サイケブームも記憶の彼方に追いやられた頃、吉祥寺の地にライブハウス「シルバー・エレファント」は誕生した。
オーナーの父・銀造氏の名に由来した店名はいかにもプログレっぽい印象だが、意外にも創業当時はノンジャンル・ミュージックの店であった。
プログレ専門店に衣替えをしたのは創業から7年後の1985年。イエス、エイジアといったプログレバンドがポップチャートを賑わし、プログレに対する認識も「小難しさ」から「馴染みやすさ」へと移り変わっていった時期である。
以来18年間プログレ一筋のスタンスは個性派揃いの吉祥寺ライブハウスシーンにおいてもひときわ異彩を放つ希有な存在として崇められることになる。
 
キャパ80人ほどの地下室は、利用料金が安いせいもあり、学生バンドのブッキングもしばしば行われる。学生に限らず出演希望バンドには、プログレ以外のジャンルでも受け入れ、演奏レベルが低くてもステージに立てるチャンスを与える。
プログレ専門店だけに超絶テクニックを駆使する猛者を想像しがちだが、敷居を下げることも忘れていない。新しい音楽シーンを創出するためにフットワークの軽さにこだわり続ける姿勢に共鳴したバンドの中には10年来の常連もいるほどだ。

数多のライブハウスがひしめき合う沿線においても、ジャズのイメージが強い吉祥寺は比較的年齢層の高いリスナーが集まるところでもあるが、この店に足を運ぶプログレ・ファンにも高年齢化が進みつつある。プログレの持つアカデミックなイメージや様式美といった要素が今の若者には「保守的」と映るのだろうか。
80年代にはニューウェイブに路線変更していったプログレ・バンドを正統派プログレ・ファンが揶揄する場面が見受けられた。その時からプログレは進化の歩を弛めてしまったのかもしれない。
「進歩的な」音楽のはずの正統派プログレがいつの間にか進化を止めてしまった現在では、レディオヘッドが奏でるロックこそが「進歩的な」プログレッシブ・ロックと言えるのだろう。
それでもいつかまた正統派プログレの血筋を引く活きのいい新人が彗星のごとく現れ、銀の象の背中で咆哮するときがやってくることを祈ろうではないか。

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シルバー・エレファントDATA
address: 〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2−10−6
phone: 0422-22-3331
access: JR・京王井の頭線 吉祥寺駅から徒歩5分
capacity: オールスタンディングで120人
いす(50脚)有りで80人 程度
url: http://plaza3.mbn.or.jp/~silver_elephant/
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